
個展というのは、いわば〝答え合わせ〟のような場所だ。
制作から離れ、客観的に自分の作品を見ることができる。そこで得た反省を、つぎの制作に持って帰る。そしてそれが、大きな財産になる。展示中にどうしても試してみたいことが出来て、帰ってから制作した作品は、満足する作品になることが多い。

元生徒から、以前こんな質問をされたことがある。
「作品を購入されて、自分の元から旅立っていくとき、寂しくないですか?」
もちろん、そういう気持ちもなくはない。
けれどもそれには二通りあって、気に入っているからこそ名残惜しい気持ちと、「ここはもう少しこう出来たかもしれない」と思うからこそ、見送りきれないところがある。(もちろんこれは作家の勝手な思いで、展示をする時点で、その受け取り方は人に委ねるのだけど)

サインをしたあとの客観的な〝答え合わせ〟で「ここはもう少し」を見つけてしまうと、僕は居ても立っても居られない気持ちになる。これは自分にとって、一番の罰だ。制作時にそれを見つけられなかった罪に対する罰だ。だからサインを入れて完成とする時は、ますます慎重になる。
しかしこれは罰でありながら、こういった経験のたび、同時に成長の機会を得ることにもなるのも、事実である。

東海テレビ番組『ニュースOne』が この春リニューアルし、自分の絵を用いたセットが終了した。2020年の3月に始まったこのセット。約2年間ほとんど毎日、僕の絵はテレビを通して、誰かの目に映っていた。

実は一度、どうしてもとお願いし、加筆にお邪魔したことがある。
本来最初からその完成に持っていかなければいけなかったはずだが、それもまた、自分の新しい絵を生み出す種となった。いつも個展という短い期間で、加筆も許されない空間でしか行えない〝答え合わせ〟を、僕はテレビを通して、こんなにも長い時間経験させていただいたわけだ。
どれほどの成長をさせてもらったか、感謝してもしきれない。

ちょうど2年前に書いたブログを読み返し、この作品を描いたことは間違いなく自分の人生の転機になったと、改めて実感している。
これからもまた、そんな経験に出会えたらいい。
そして漠然と、出会えるような気もしている。

はじまりがあって終わりがあることを、僕は美しいと思う。
嬉しく思う。
次は常に、はじまっているのだ。