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新しい相棒

山田雅哉

一年でいちばん寒い日。

今日も僕はバイクに乗っている。


バイクが好きだ。

夏のうだるような暑さも、冬の厳しい寒さも、ダイレクトに感じるバイク。

勿論車の便利さは知っているけれど、僕はオートバイが好きだ。


バイクとの出会いは、高校時代。原付の免許を取って 初めて買ったバイクは、スーパーカブだった。ブルーのカブは浪人中の足となり、雪の日も一緒に走った。

それから大学生になり、次に中型二輪の免許を取った僕は、400ccの単気筒エンジンに乗った。楽しかった。しかし画材を運ぶことが多く、バイクは手放すこととなる。

そして、現在。またバイクに乗れる環境になり、僕はバイクの面白さを改めて感じている。


これまでに、たくさんのバイクを相棒にしてきた。

スーパーカブ、50ccのモンキー、SR。最近では大型免許も取得し、憧れのハーレーにも乗った。

ハーレーは、いろいろとパーツを交換し、カスタムをして楽しんだ。

しかしある日ふと、何かが足りない気がしてきた。最新の、なんでも揃っているようなバイクなのに、なぜだろう。手に余る大きなものを求めて、より渇いていってしまうような、もやもやしたあの感じ。

その原因を知ろうとバイクの仕組みを調べてみると、どうも「インジェクション(ガソリンの供給方式がコンピュータ制御)」が、今の自分に合わないような気がしているのだとわかった。そうすると、きっと昔の「キャブレター」のバイクがいいのではないだろうか。


そんな折、XL125S という自分と同い年のバイクと出会い、すぐにに購入を決めてしまった。


やれたような赤。

かすれた文字に、錆。

はっきりいって見た目はボロい。

でもなぜだか、共に歩く、相棒という感じがする。

なにか生き物のように、呼吸を感じたりする。


キック式のエンジンは、調子が悪いと全然かかってくれない。「よろしくね」なんて宥めたりして、走り出す。

一年でいちばん寒い日。

頬を冷たい風が流れていく。


エンジンの鼓動とシンクロして、歌が聞こえる。

今日も僕は、バイクに乗っている。